記事の内容
マーケティング&イノベーション専門メディア「日経クロストレンド」が年に2回作成する「トレンドマップ」。
日経クロストレンド編集部が選定した「技術」、「マーケティング」、「消費」分野のキーワードを、同誌の外部アドバイザリーボードや編集部の記者など専門家が(その時点での)「将来性」と「経済インパクト」を判定し、キーワードを5段階でスコアリングするというものです。
調査対象となる、「技術」、「マーケティング」、「消費」の3分野は非常に変化が激しく、取り上げられるキーワードやスコアの推移を通して時代の潮流を読み解くことができます。
新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行し、様々な変化が起きた2020年。
トレンドマップではどんなキーワードが注目されたのでしょうか。
今年の夏に発表された最新のトレンドマップから、各分野で注目を集めたキーワードをもとに2020年を振り返ります。
トレンドマップ2020夏に見るコロナの影響力
2020年の夏に作成された最新のトレンドマップを見ると、スコアを伸ばしたり新たに追加されたキーワードは、いずれもコロナ関連のものが多いことが分かります。
ここでも、世界経済に激震をもたらした新型コロナウイルスの影響力の強さがわかります。
では実際、どのようなキーワード注目されているか見てみましょう。
各分野でスコアを伸ばしたキーワード(2020年冬調査との比較)
将来性
分野 | キーワード | スコア | 前回比 |
---|---|---|---|
技術 | ロボティクス | 4.31 | +0.24 |
DX (デジタルトランスフォーメーション) | 4.41 | +0.22 | |
人間拡張 | 3.76 | +0.22 | |
マーケティング | チャットbot | 3.59 | +0.35 |
DMP (データ・マネジメント・プラットフォーム) | 3.60 | +0.32 | |
消費 | ワーケーション (ワーク×バケーション) | 3.32 | +0.44 |
サブスクリプション消費 | 4.24 | +0.24 |
経済インパクト
分野 | キーワード | スコア | 前回比 |
---|---|---|---|
技術 | DX (デジタルトランスフォーメーション) | 3.62 | +0.74 |
5G(第5世代移動通信システム) | 3.15 | +0.47 | |
マーケティング | アドベリフィケーション | 2.48 | +0.29 |
コンテンツマーケティング | 3.15 | +0.25 | |
消費 | MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス) | 2.72 | +0.22 |
アクティブシニア | 3.24 | +0.19 |
今年を象徴するキーワードとなったDX(デジタルトランスフォーメーション)
2020年3月に行われた「日経トレンドマップ2020年冬」と比較し「将来性」、「経済インパクト」いずれにおいてもスコアを伸ばした注目のキーワードは、以前、当コラムでも取り上げたDX(デジタルトランスフォーメーション)です。
新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とした緊急事態宣言の発令により、多くの企業がテレワークを導入し、ビデオ会議システムをはじめとするITツールの利用が進みました。
また、テレワークによる在宅勤務の増加は消費行動にも影響をもたらしています。
生活の中心が自宅となったことや人との接触を避ける意識から、ネット通販やフードデリバリーの需要が拡大、小売業や飲食業は大きな打撃を受けました。
2020年はこうした「ニューノーマル(新常態)」への大きな転換期であり、その背景でDXが大きく前進する1年でした。
「ニューノーマル」がもたらした新しい働き方
新型コロナウイルスの感染拡大は、東京一極集中で成り立つ現在の経済活動に一石を投じるとともに、テレワークなどオフィスを必要としない新しい働き方を加速させました。
そうした中、観光地やリゾート地でテレワークを活用し、働きながら休暇を取る「ワーケーション(ワーク×バケーション)」という概念が生まれました。
まさに、ニューノーマルがもたらした新しい働き方の概念と捉えることができます。
ヤフーCSOの安宅和人氏は、withコロナ時代は人や経済が密を避け開放と疎に向かう、いわゆる「開疎化」が大きなトレンドになり、コロナに端を発した行動変容は今後も続いていくと予測しています。
DXと新しい働き方をさらに加速させる5G
携帯大手3社がついにサービス提供を開始した「5G(第5世代移動通信システム)」も、2020年注目のキーワードです。
以前、当コラムの「withコロナ時代だからこそ5Gとその未来について考えてみる」でも取り上げた通り、5Gは新型コロナウイルスによって生じたDXをさらに加速させる上で重要な役割を果たします。
コロナ禍で伸びたサブスクリプション消費
消費において注目を集めたキーワードとして「サブスクリプション消費」があります。
サブスクリプションとは、商品やサービスの購入に対し金額を支払うのではなく一定期間の利用権に対して金額を支払う形式のビジネスモデルです。
支払い方法としては定額制とほぼ同義ですが、サブスクリプションは顧客満足を追求し提供サービスを磨き続けるという考え方の点で異なります。
有名なサブスクリプションとしては「Apple Music」や「Spotify」、「Amazonプライム」や「Hulu」、「Netflix」など音楽や映像の配信サービスが挙げられ、コロナ禍における巣ごもり消費に支えられ売り上げを伸ばしています。
他にも教育機関やスポーツジムなどの施設が閉鎖されたことにより需要が高まったEラーニング、パーソナルトレーニングやレッスンのオンライン配信などのサブスクリプションが話題になりました。
トレンドマップに新たに6つのキーワードが追加
トレンドマップには新たに6つのキーワードが追加されましたが、こちらも新型コロナウイルスの影響を受けた内容になっています。
新たに追加されたキーワードと将来性スコア
分野 | キーワード | 将来性スコア |
---|---|---|
技術 | コンタクトレス・テクノロジー | 4.13 |
フードテック | 4.10 | |
マーケティング | デジタル接客 | 4.19 |
カスタマーサクセス | 4.00 | |
消費 | Z世代 | 3.80 |
巣ごもり消費 | 3.65 |
コロナで需要が増した非接触技術
技術分野で追加された「コンタクトレス・テクノロジー」は、その名の通り非接触を実現するための技術です。
タッチレスなどとも呼ばれています。
新型コロナ ウイルスの感染拡大は物理的接触に対する価値観を大きく変えました。
人々は手や体の接触に敏感になっています。
そのため、少しでも物理的接触が少なくて済む商品やサービスを求めています。
非接触型の体温計を目にする機会は以前に比べ格段に増えたはずです。
また、エレベーターのボタン、水道タップなど、これまで接触が当たり前とされてきたものにも非接触技術が導入され話題となっています。
さらに、非対面のニーズも高まっています。
ネット通販などECの需要が高まる中、オンラインでの顧客体験の質向上を目的とした「デジタル接客」が支持を受けています。
マッピングされるキーワードにはそれぞれに関連性も
各分野でスコアを伸ばしたキーワードや新しく追加されたキーワードを見ると、それぞれつながりのあるキーワードであることがわかります。
例えば、
コロナ禍で進んだDXによりワーケーションという新しい働き方が生まれ、DXや新しい働き方を加速させる技術として5Gがある
といった具合です。
新しく追加されたキーワードに「カスタマーサクセス」というものがありますが、カスタマーサクセスは顧客ロイヤルティ(顧客が持つ自社サービスへの帰属心)を向上させ継続利用を促し、LTV(Life Time Value = 取引開始から終了までに顧客が自社に対しどれくらい利益をもたらしたか収益の総額を算出するための指標)の最大化を目指すための概念であり、前述のサブスクリプションを成功させる上で重要な考え方です。
また、サブスクリプションはZ世代の消費行動を象徴するキーワードです。
Z世代とは1996年から2012年に生まれた、いわゆるデジタルネイティブ(生まれた時からインターネットに親しんでいる)世代を指しますが、彼らの消費行動の特徴として、「所有欲が低い」ということが挙げられます。
これは「モノ」消費から「コト」消費(所有するから体験する)への転換と捉えることもできます。
このように、注目されるキーワードというのはそれぞれが密接に関わり合っています。
一つ一つのキーワードの意味を理解することよりも、注目されているキーワードそれぞれの関係性や、なぜその言葉が注目されているのか、その背景を理解することが大切です。
まとめ
今年4月、新型コロナウイルス第1波の影響で世界各国の主要都市がロックダウンとなる中、Googleのスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は電話会見で、コロナ後の社会について「緊急事態が終わっても、世界は以前と同じような姿ではないだろう」と述べました。
さらに、「オンライン上での仕事、教育、医療、買い物、娯楽は今後も増えていく」と言及しています。
グーグルCEO「世界は戻らない」デジタル化加速予測(朝日新聞デジタルより)
当コラムでは、これまで幾度となくコロナがもたらした影響と、それによって起こった大きな変化を取り上げてきました。
2020年はまさに大きな転換の年となりました。
私たちは今、かつてない大きな変化の中にいます。
大切なのは「これまでどうだったか(どうしたか)」と過去の知識や経験則にとらわれるのではなく、変わってしまった日常と新しい価値観を受け入れ、私たち自身をアジャストしていくことです。
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