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変わりゆく西研、変わりゆく「ものづくり」
ー西研グラフィックス

ビジネス

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挑戦している人や企業にフォーカスし、様々なことについて話を聞くインタビュー記事。今回は日本でも3社しかない、新聞印刷用オフセット輪転機メーカーの西研グラフィックス株式会社です。

高架下に所狭しと軒を連ねる昔ながらの商店や飲食店。どこか昭和の香りが漂うここ御徒町は、宝飾品の問屋が数多く店を構えることから、日本有数の宝飾品街としても知られています。

もともと伝統工芸品の街として栄えた御徒町。2016年には、そんなかつての街並みを現代にリメイクした、2k540 AKI-OKA ARTISAN(ニーケーゴーヨンマル アキオカ アルチザン)が高架下にオープン。「ものづくり」をコンセプトとし、工房とショップをミックスしたユニークなスタイルのお店が集まっています。

再注目を集めるこの街に、日本で3社、世界的に見ても8社しかない、新聞輪転機メーカー・西研グラフィックス株式会社の東京支社があります。

技術立社を合言葉に、新聞印刷輪転機を中心に、様々な周辺機器を開発、製造する同社。近年は、国内はもとより、中国やインドにも進出しています。

インドタティ社との契約の様子、左は社長の並田正太氏

新聞業界を半世紀以上にわたり支え続けてきた同社は、今何を考え、将来に対してどのような展望を描いているのでしょうか。今回は、そんな西研グラフィックス株式会社の常務執行役員でありながら新規事業営業本部本部長、東京支社長を務める、小池亨さんに企業戦略や強い組織づくりについて伺いました。

西研を支える「ものづくり精神」

西研グラフィックスの成り立ちについて教えてください。

創業1950年なので今年で69年、来年で70周年を迎えます。

大阪出身で、ハマダ印刷機械(2004年に東京機械製作所に買収され、現在は伊賀マシナリー)の技術者を務めていた創業者の並田勇は、もともと毎日新聞社大阪センターの輪転機メンテナンスを担当していました。
そんな中、毎日新聞社が九州にも印刷工場を建設することとなり、その腕を買われた並田は九州に同行するかたちで独立します。この時に立ち上げた新聞輪転機のメンテナンス会社、株式会社西部印刷機研究所が当社の前身です。そこから自社で製品をつくるようになり今に至ります。

創業当時のメンバー。後列右端が創業者の並田勇氏

創業1950年なので今年で69年、来年で70周年を迎えます。

大阪出身で、ハマダ印刷機械(2004年に東京機械製作所に買収され、現在は伊賀マシナリー)の技術者を務めていた創業者の並田勇は、もともと毎日新聞社大阪センターの輪転機メンテナンスを担当していました。
そんな中、毎日新聞社が九州にも印刷工場を建設することとなり、その腕を買われた並田は九州に同行するかたちで独立します。この時に立ち上げた新聞輪転機のメンテナンス会社、株式会社西部印刷機研究所が当社の前身です。そこから自社で製品をつくるようになり今に至ります。

西研グラフィックスのものづくりに対するスタンスをお聞かせください

当社では両輪という言葉をよく使います。これは当社の企業理念、「技術立社」「顧客第一」をベースとした考え方です。つまり、メーカーである私たちは、いつの時代も技術と営業の両輪によって成り立ちます。

「技術立社」「顧客第一」にはそれぞれテーマがあり、「技術立社」は

  • 品質を最優先
  • 先端技術に挑戦
  • 合理的生産でコスト削減

一方、「顧客第一」は

  • 信用と信頼が原点
  • 徹底した顧客サービス
  • 顧客ニーズの先取り

をテーマにしています。これらの両輪をもって会社のポリシーとしています。

経営理念について語る小池さん

西研の強みとはどのような部分にあるのでしょうか?

当社の主力製品である新聞輪転機であれば、機械や電気の設計、機械の加工や組み立て、そして出向いての機械の設置(据付)作業をトータルで行うことが可能です

例えば他のメーカーであれば、輪転機本体の製造は自社で行いますが、モーターなどの部品は他社製品を採用しているケースが多くあります。しかし、当社の場合は、そうしたソフトの部分も電機メーカーと共同開発するなどしています。

そういった、ソフトもハードもトータルで手がけることができることに、当社の強みがあるといえます。

新しい市場の創出、キーワードは「自動化」

新聞印刷業界における新聞輪転機の需要はどのように推移していますか?また、社として、今後の戦略などあれば教えてください。

2020年の東京五輪を見据え、数年前から新聞印刷各社は揃って輪転機の更新を行ってきました。

しかし、2020年を境に輪転機の更新は大幅に減少すると見られています。こうした背景から、今後は新規事業への取り組みを加速化させる予定です。

輪転機だけではなく、当社の技術力をベースとし、全く新しい分野への進出に取り組んでいる最中です。

全く新しい分野。例えばそれはどのような分野でしょう?

例えば、当社では、新聞輪転機もさることながら、刷り上がった新聞を搬送するキャリアやコンベアなど輪転機の周辺機器の設計、開発、製造も行なっています。

もともとそれらは、人手で行っていた作業を機械により自動化したものです。

つまり、新規事業では、この「自動化」を軸に異なる分野に進出を試みます。今、人が行っていることを機械に置き換えていく、もしくは、人が行っている作業を機械によって軽減する。

設計、開発、製造、設置をトータルで行えるという私たちの強みは、新聞印刷以外の分野にも応用可能です。

自動化とお聞きすると、例えばロボットアームのようなものが真っ先に思い浮かびますが。

ロボットアームというのは自動化のための一つのツールですよね。

当社には搬送機器の開発、製造ノウハウもあります。ですから、製造ライン自体を自動化することが可能です。

例えば、自社の製造ラインにも多関節ロボットアームを設置し、キャリアチェーンの全品検査を全て機械が行なっています。もともと、これらは人手で行なっていた作業です。

ロボットアームを購入し、動作させるためのソフトを開発、さらに、部品が流れるコンベアの設計や開発も自社で行いました。

このように、当社は、様々なハード、ソフトの組み合わせによるシステムインテグレーションを得意としています。

キャリアチェーンの強度検査も最初は人が行なっていた

なるほど。ターゲットとなりそうな業界も数多くありそうです。もし、差し支えないようでしたら、導入事例など教えていただけますか?

自動車メーカーのエンジンバルブの製造ラインを自動化した実績を持ちます。また、同じ印刷でも商業印刷の分野なんかにも進出しています。

商業印刷?具体的にはどのような部分でしょうか?

新聞印刷では刷版の折り曲げを全て機械(ベンダー)が自動で行いますが、商業印刷では折り曲げは全て手動で行われています。

当社はベンダーの開発も自社で行なっているため、商業印刷用にベンダーを開発しました。

また、商業印刷には存在しませんが、ベンダーと刷版の振り分けを自動で行うような仕組みを作ることも可能です。

このように、競合他社がまだ取り組んでことの中に、課題やニーズは存在しているものです。重要なのは、それを課題やニーズだと見極められるかどうかです。

気付いていないだけで、マーケットは私たちの周りに無限にあると考えています。

ベンダーや自動仕分けは商業印刷ではない仕組みだという

業界的には常識となっているようなことでも、実は課題やニーズをはらんでいる可能性があるということですね。自動化によって得られる最大の価値とは何でしょうか?

現在、福岡の食品メーカーから引き合いを受けています。これは、人が目視で行なっている検品作業の自動化です。

先ほどの、キャリアチェーンの検品作業もそうですが、正確性とスピードが求められるような重要な役割を、機械に置き換えることにより、作業効率を促進するだけでなく、ミスを低減することが可能です。

つまり自動化は最終的に品質の向上につながると考えています。

「モノを売る」から「技術を売る」へのシフト

他にも、新しい取り組みの一つに三次元測定※サービスがありますが、なぜこのようなサービスを開始したのか、その経緯についてお聞かせください。

もともと我々は輪転機の据付精度を向上させるためにレーザートラッカーを、新聞を搬送するキャリアのコース検討の際、空間に干渉物がないかを測定するためにレーザースキャナーを所有しています。

これらを使いこなし精度の高い測定を行うためには、確かな技術が必要となります。

私たちは、新聞印刷輪転機や搬送用のキャリアを扱うメーカーとして、三次元測定器を使いこなす技術やノウハウを持っています。
それらを外部にも還元していこうと始めたのがきっかけです。先ほどの技術立社という言葉にも象徴されるように「技術を売る」という考え方に基づいたサービスです。

※三次元測定器とは複雑な立体などを測定し3Dデータを取得できる測定器。今年に入り、西研グラフィックスは三次元測定サービス専用のサイトを開設。その構築を東日印刷にご依頼いただいた。公開1カ月以内でサイトからの初受注を果たすなど、滑り出しは順調とのことだ。

西研の三次元測定サービスの特徴や、それによりどんなことが可能かを教えていただけますか?

先ほど当社は、設計、開発、製造、設置までをトータルで行うことができるメーカーであるとご説明しましたが、そうした強みを活かし、ただの測定サービスではなく、メーカーならではのプラスアルファの付加価値を提供できることが大きな特徴です。
私たちはこれを、ノンストップエンジニアリングサービスと称しています。

測定サービスは大きく分けて部品測定と、空間測定を行なっていますが、部品測定では、図面がなくなってしまったような古い部品を測定して3DCADデータとしてお渡しすることもできますし、データを元に部品を製造しお渡しすることも可能です。

つまり、足りない部品は全て再現することができます。

また、レーザースキャナーで行う空間測定では、測定結果をVRデータに変換することができるため、例えば、リフォームを検討しているお宅をレーザースキャナーで測定し、測定結果をVRデータに変換、そこにキッチンなどのCADデータを組み込めば、仮想空間上でリフォームの仕上がりを確認することも可能です。

今後は、法人のみならず一般消費者にも展開できるサービスではないかと考えています。

他にアーム式三次元測定器というのがありますが、こちらはどのような特徴を持っていますか

先ほどのレーザートラッカーとレーザースキャナーには弱点があり、いわゆる正円の測定は可能ですが、それ以外の不規則な円、自由曲線を測定することができません。

そんな時は、アーム式三次元測定器を利用することにより、曲線(局面)をなぞる形で測定することが可能です。

この3つを組み合わせれば測定できないものありません。

新聞輪転機というのは更新サイクルも長く、需要にも浮き沈みがあります。だからこそ「技術を売る」という考え方へのシフトが必要だと思っています。

西研の考える組織論

新規事業のように今までにはない全く新しい価値を提供する上では、組織全体が同じ方向を向き、足並みも揃える必要があるかと思います。組織をまとめ上げていくコツのようなものはありますか?

部の垣根をなくし、会議を最大のコミュニケーションの場として活用しています。もちろん、経営に関する会議というのは経営陣だけで行いますが、その他の会議は、部門の制約は一切ありません。

テレビ会議もそうですし、例えば営業の会議に他部署が参加してくるなんてこともあります。案件共有をして、具体的にプロジェクトの工程に問題がないかなど検討したりします。

社内での情報共有は盛んそうですね。

非常に盛んです。報告書なんかも、クラウドで全員が見ることができるようになっています。

人材育成に関してはいかがでしょう?

当社は12月決算ですから、毎年1月に会社方針を打ち出します。

そして、その会社方針を実現するために各本部がそれぞれ目標を定め、さらには、その目標に受けるかたちで、部が、そして、その下の課が目標を定めます。

こうして最終的に、掲げられた目標に向かって「あなたは何をしますか?」という個人レベルでの目標が決まります。ですから、必然的に向いている方向は同じになります。

社員の目標設定は必ず上司と部下が話し合いの上決定し、そこで定めた目標に対しての達成度が賞与など評価のベースになっています。

目標設定は、上司と部下の話し合いの上に決まる

毎年、全社員参加型のイベントを実施していて、今年はバーベキューかケータリングパーティーを行う予定です。
また、他にも毎年12月に行われる納会では、幹部が社員に対して、料理を作ったり、お酒を振舞ったりしてもてなしています。

当社の納会は、社員の労をねぎらう場です。

ですから、幹部はいいお酒を自腹で購入したりしています 笑。
ちなみに社長はビールサーバー係で、社員一人一人に声をかけビールを注いでいます。

また会では、高額な景品が用意され、じゃんけん大会なども開かれるため、盛り上がっています。

「偉い人」が社員をもてなす。だから社員も自然と笑顔になる

すごいことをやっていますね。発案者はどなたですか?

私です 笑。

伝統がある会社でありながら、取り組みも非常に斬新で、風通しの良い会社である印象を受けました。

そういう企業を目指していこうと思っているんです。今までずっとそうだったというわけではありません。

数年前に、社長も交代し経営陣も若返りましたから、それをきっかけに社の風土も変えていこうと考えています。

新しい時代の流れの中で、今までにない価値を創出していくわけですから、社内にも新しい風を吹き込む必要があります。

編集後記

2020年には創業70周年を迎えた西研グラフィックス。
企業としてはすでに円熟期にある老舗メーカーでありながら、今までの常識にとらわれることなく、新しいことに積極的に取り組んでいる印象を受けます。

そして、確かな技術力をベースに、市場にある様々な課題を解決していこうとするさまは、「技術立社」と「顧客第一」の精神からくるものです。

いつの時代も変わらず受け継ぐべきものと、時代の流れとともに変えなければいけないもの。

西研グラフィックスの取り組みに、持続可能なビジネスモデルへのヒントを見たように思います。

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