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<写真=産経新聞>
お正月の風物詩「東京箱根間往復大学駅伝競走」が近づいてきました。
東京・読売新聞社前〜箱根・芦ノ湖間を往路5区間(107.5Km)、復路5区間(109.6Km)の合計10区間(217.1Km)で競う、学生長距離界最長の駅伝競走で、毎回テレビの視聴率は30%前後を記録する最強のスポーツコンテンツです。
10区間にはそれぞれ特徴があり、12月上旬に16人の「メンバーエントリー」が終わると、本番での区間配置に指揮官たちは頭を悩ませることになります。
今回のコラムでは筆者の独断により、その難解な区間配置を歴代プロ野球優勝チームの打順に当てはめて説明します(選手名の敬称略、◯数字は学年)。
※各チームの年度別オーダーはこのサイトを参考にしています。
※優勝チームには、ペナントレースの優勝チームと、クライマックスシリーズを勝ち上がっての 日本シリーズ進出チームを含みます。
1区 大手町・読売新聞本社〜鶴見中継所(21.3キロ)…1番打者
全チームが一斉に走り出し、前半は高低差のあまりない平坦な道が続き、お互い様子を伺いながら集団走が続く1区は、1番打者に例えることができます。
1985年阪神タイガース・真弓明信(.322 34本 84打点)や2007年読売ジャイアンツ・高橋由伸(.308 35本 88打点)のような大砲を起用すれば、ホームランでいきなり先制点を挙げることができるだけでなく、試合を優位に進めることができます。同様に、スタートで後続に大きなリードを奪うことができればレースを優位に進めることができます。反対に、1区で出遅れてしまうとレースの終盤で追い上げることが難しくなってしまうため、準エース級のスピードがある選手を起用するチームが多くなります。近年では、お互いがけん制し合い有力選手を目標にすることで17キロを過ぎた六郷橋あたりまで集団走になる傾向があります。
東京国際大学・山谷昌也③(1万メートル 28分 11秒 94)、中央大学・吉居大和②(1万メートル 28分 08秒 61)といった有力ランナーの起用が予想されていますが、1万メートル 27分 45秒 59の記録を持つ駿河台大学・ジェームズ・ブヌカ④が起用されれば、2007年第83回大会で後続に4分1秒もの大差をつけた佐藤悠基(当時東海大2年)のように序盤から後続を突き放す走りが見られるかもしれません。
2区 鶴見中継所〜戸塚中継所(23.1キロ)…3番打者
距離が長いということだけでなく、13キロ地点に権太坂があり、残り3キロではアップダウンが繰り返されるなどタフなコースで、ただ直線で速いだけではなくアップダウンにも対応できる本当の実力者が求められる2区は、長打力を兼ね備えながら高打率も残すことのできる3番打者に例えることができます。
1区で多少出遅れても(1、2番打者が凡退しても)、2区に有力選手を起用していればすぐに取り返すことができ、1区で先行して入れば(1、2番打者が出塁していれば)この2区でさらにリードを広げることができるはずです。
助っ人外国人選手ならぬ外国人留学生が多く起用されるのも特徴です。
起用が有力視される東京国際大学・イエゴン・ヴィンセント③が1985年阪神タイガース・ランディ・バース(.350 54本 134打点)だとすれば、駒澤大学・田澤廉③は2015年福岡ソフトバンクホークス・柳田悠岐(.363 34本 99打点)といったところでしょうか。
3区 戸塚中継所〜平塚中継所(21.4キロ)…5番打者
2区からの流れを維持したり、修正したりが求められる重要な区間であり、徐々に集団がばらけ、単独で走ることが多くなる3区は、初回に打順が回れば(1、2区が良い位置で繋げば)大量得点のチャンスで、反対に思い通りの位置でなければ次のイニングにチャンスメイクする(挽回する)ことが求められる5番打者に例えることができます。
3番4番の後に強打者が控えていると大量得点のチャンスとなります。2005年阪神タイガース・今岡誠(,279 29 本 147 打点)のような活躍を見せるのは、早稲田大学・中谷雄飛④でしょうか、青山学院大学・近藤幸太郎③でしょうか、それとも陸上選手としては珍しいアイブラックを装着し全日本大学駅伝6区で快走を見せた東京国際大学・丹所健③でしょうか。
4区 平塚中継所〜小田原中継所(20.9キロ)…2番打者
2006年第82回から2016年第92回までは18.5キロとされ、区間距離が大会唯一20キロを切ることから、4区は山上りへの「つなぎの区間」と呼ばれていたこともありました。2017年第93回大会からは区間距離が20.9キロに戻り、上位のチームはこの区間で前のチームとの差を縮めたいため、チームによってはエース級の選手を配置することも多くなりました。よって、以前は送りバントやエンドランなどの小技でつなぎを求められていましたが、近年では強打者を置くチームが増えている2番打者に例えることができます。
2004年第80回大会から最優秀選手に対して金栗四三杯(MVP)が贈呈されることになって以来、4区のランナーが受賞したことはありません。2019年にMVPを受賞した読売ジャイアンツ・坂本勇人(.312 40本 94打点)のように、つなぎの概念を覆して4区から初めてMVPが選出されるかにも注目です。
5区 小田原中継所〜箱根・芦ノ湖駐車場入口(20.8キロ)…4番打者
標高差864mを駆け上がる最大の難所とも言われている山上り区間であり、突風や雪、凍結した路面など厳しい気象条件が選手たちを苦しめる箱根駅伝の看板区間である5区は、もちろんチームの顔となる4番打者に例えることができます。全区間中で最も差がつく区間であり、チームの成績を左右してきたことは、過去18回のべ19人のMVPのうち9人がこの5区から選ばれていることからもわかります。
1986年から1994年にかけて9シーズン中8度のリーグ優勝、6度の日本一に輝いた西武ライオンズの不動の4番打者としてチームの勝利に貢献し続けた清原和博のように、安心して任せられる選手がいることが望ましいですが、適任者がいない場合は2005年に日本一に輝いた千葉ロッテマリーンズ・サブロー(.313 14本 50打点)のように「つなぎの4番」でしのぐことになります。
11月にターンパイク箱根で開催された激坂最速王決定戦で学生トップ(2位)となった國學院大學・殿地琢朗④や、前回大会でこの区間2位となった創価大学・三上雄太④の走りに注目です。
6区 箱根・芦ノ湖駐車場入口〜小田原中継所(20.8キロ)…8番打者
朝8時台に高地からのスタートということで体温調節にも気を使う必要があり、平均時速25キロという高速で小さなカーブを多く回ります。ひざに大きな負担がかかる中でコース終盤まで監督の乗る運営管理者からの指示を受けられず、自らのレースマネジメントが必要とされる6区は、「グラウンドにおける監督」と言われるキャッチャーが務めることの多い8番打者に例えることができます。
「意外性の男」と呼ばれ、1987年MVPを獲得した読売ジャイアンツ・山倉和博(.273 22本 66打点)のように「意外なところで」「あっと驚く」活躍を見せる選手が現れるでしょうか。
7区 小田原中継所〜平塚中継所(21.3キロ)、8区 平塚中継所〜戸塚中継所(21.4キロ)…7番打者
平坦なコースであり、10区間中最も走りやすい区間と言われる7区と、後半に遊行寺の坂が待ち受けるスピードよりもタフな選手が重宝される8区は、チームごとに特性の異なる選手が起用される傾向があり、それぞれのチーム事情により伸び盛りの若手や打率は低くても長打力に長けた選手など、タイプの異なる選手が起用される7番打者に例えることができます。
高卒入団4年目で一気にスターに駆け上った2004年西武ライオンズ・中島裕之(現.宏之)(.287 27本 90打点)、盗塁・犠打ともに二桁を記録しチーム躍進を陰で支えた2017年広島東洋カープ・安部友裕(.310 4本 49打点 )のような若手選手(下級生)の台頭にも期待しましょう。
9区 小田原中継所〜平塚中継所(23.1キロ)、10区 鶴見中継所〜大手町・読売新聞本社前(23.0キロ)…6番打者
序盤は下り坂が続き、後半は平坦な道を走り、復路最長区間となる9区と、気温が上昇する中で箱根駅伝を締めくくる10区は、優勝争いやシード権争いのプレッシャーのかかる区間であり、中軸が返し切れなかったランナーを返して得点を掴むための6番打者に例えることができます。
1987年読売ジャイアンツ・吉村禎章(.322 30本 86打点)、2015年福岡ソフトバンクホークス・松田宣浩(.287 35本 94打点)のようにクリーンアップにも引けを取らない打棒でチームに導くような選手の登場に期待しましょう。
今回もまた、あなたの、私の夢が走ります。
あなたの夢は
・1万メートル上位10人の平均が史上最速となる28分24秒65。異次元の速さに加えて大エース田澤廉③、スピード自慢の唐澤拓海②、安定感抜群の花尾恭輔②、復活した鈴木芽吹②と豊富なタレントで連覇を狙う駒沢大学か
・1区に山谷昌也③、2区に最強のケニア人留学生イエゴン・ヴィンセント③、3区に丹所健③と力のある選手を前半区間に配置し主導権を握り、初優勝を狙う東京国際大学か
・史上初めて1万メートルの27分台の選手が3人(中谷雄飛④27分54秒06、太田直希④27分55秒59、井川龍人③27分59秒74)メンバー入りした早稲田大学か
・今年度、出雲・全日本とも4位。強力な4年生を中心に初優勝を狙う國學院大學か
・前回大会あと一歩のところで総合優勝を逃したものの、虎視眈々と旋風の再現を狙っている創価大学か
私の夢は、
・近藤幸太郎③がエースとしての力を見せつけ、1年生で箱根駅伝の2区を任された岸本大紀③が長いけがを乗り越えてメンバー入りを果たしたほか、登録メンバー16人全員が1万メートル28分台という層の厚さを誇り、原晋監督の「パワフル大作戦」のもと王座返り咲きを期す青山学院大学です。
青山学院大学区間配置予想
1区佐藤一世②
2区岸本大紀③
3区近藤幸太郎③
4区西久保遼③
5区飯田貴之④
6区高橋勇輝④
7区中村唯翔③
8区田中悠登①
9区宮坂大器③
10区横田俊吾③
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