名刺管理アプリには個人向けのものと法人向けのものがあるのをご存知ですか。
実は利用の目的や実現したことによってどちらが選ぶべきかは変わってきます。
今回はそれぞれの特長やメリット、デメリットについて詳しく解説します。
それぞれの特徴を理解した上でみなさんとって最適なものをお選びください。
1. 個人向け名刺管理アプリ
個人向け名刺管理アプリは、個人が名刺を自己管理する目的で設計されたアプリです。主にフリーランスや個人事業主など名刺情報を誰かと共有する必要がない人に適しています。シンプルに名刺を管理するだけであれば個人向けの名刺管理アプリで十分かもしれません。
特徴
- シンプルな操作性
分かりやすいインターフェースで、名刺をスキャンしてデジタル化することに特化しています。 - 低コストまたは無料
無料であったり有料でも低価格であることが多く、個人ユーザーが手軽に使えるよう設計されています。 - 個人データの保存と管理
名刺データはクラウドやローカルに保存されますが、他人と共有する機能は基本的に制限されています。仮に共有機能があっても、共有する名刺の選択は個人に委ねられています。つまり、共有を前提とした作りではありません。 - SNS要素の搭載
一部の個人向け名刺管理アプリには、名刺交換した相手とSNS的にネットワーク形成可能なものがあります。交換した相手に対しメール通知されることがあるため、通知設定にも注意する必要があります。
メリット
- 手軽さ
- 個人利用のため大がかりな設定が不要であることが多い。
- 専門知識がなくてもすぐに利用開始できる。
- 低コスト
- 無料プランでも十分な機能を利用可能。
- 有料でも低価格なため個人で費用を負担しやすい。
- プライバシー管理
- 誰かと名刺データを共有せず自分だけのデータを管理するため、情報漏洩のリスクが低い。
デメリット
- 組織での利用に向かない
- 個人管理を前提としているため組織利用向けのユーザー管理機能がない
- 組織利用すると常に名刺情報の持ち出しのリスクが伴う
- 機能の限界
- 商談管理など営業支援的な機能がない。
- API連携などがないケースが多い。
- データの孤立
- 部門を越えての共有や他のツールとの連携が制限される。
2. 法人向け名刺管理アプリ
法人向け名刺管理アプリは、組織全体で名刺情報を一元管理するためのツールです。組織内にある人脈情報の可視化と資産化を目的としており、営業、マーケティング、管理部門などのように、複数の部署で情報を共有し活用することができます。
特徴
- 組織での利用に適している
名刺データを組織内で共有し、部門の垣根を越え情報連携を強化することができます。名刺情報の属人化を防ぎ、名刺が組織の情報資産になります。 - 高度な機能
商談管理機能、メール配信機能(1to1メール)などの営業支援機能やCRMなどとのAPI連携など、業務を効率化させる機能が多く搭載されています。 - コンプライアンス強化
退職者、転職者による名刺情報の持ち出しや個人管理による紛失を防ぎ、組織としてのコンプライアンス向上に役立ちます。 - セキュリティ機能
ユーザーのレベルに応じて可能な操作を制限する権限設定や情報へのアクセルレベルの設定など個人情報である名刺情報を保護する機能があります。他にも、二要素認証によるログイン画面強化やIP制限、操作ログの取得などが可能です。
メリット
- 情報の一元管理
- 部署や社員間で名刺情報を共有することで情報の属人化を防止。さらに組織内の有効な人脈を可視化することで組織的な営業が可能に。
- 組織を受け皿として名刺情報を集積することで顧客データの一元管理が実現。顧客情報の重複や散逸を防止し常に最新の状態を維持することが可能。
- 業務効率化
- タグやCSVエクスポートを活用することで顧客リスト作成が容易に。また、他のシステムへのデータ移行も可能に。
- 名刺情報に紐づけ商談や案件の管理が可能で営業活動などの属人化防止に貢献。
- メール配信機能で1to1の情報配信が可能。開封率やメール文中リンクのクリック率計測が可能でムダのない営業に貢献。
- API連携により名刺情報をCRMやSFAにリアルタイムで反映可能。データ入力作業が大きく低減。
- セキュリティ対策
- アカウントの無効化により退職や転職者による名刺データの持ち出しを防止。
- 権限設定でユーザーのアクセスレベルをコントロール。操作ログの取得も可能で情報漏洩のリスクを軽減。
- 許可されたIPアドレスのみにアクセスを制限することが可能。
デメリット
- コストが高い
- 月額費用が個人向けアプリと比べて高額(例: 数万円~)。
- 初期導入費用や登録枚数により追加費用が発生する場合も。
- 導入と運用の手間
- 導入にあたって準備や初期設定が必要。
- 代表管理者の選出や社内の運用ルールの取り決めが必要。
- 社員への操作説明など活用を定着させるためのコスト。
- 過剰機能の可能性
- 複雑な機能があると活用に個人差が生じやすい。
- すべての機能を使いこなせない場合、コストパフォーマンスが悪くなる。
項目別比較表
項目 | 個人向け | 法人向け |
---|---|---|
利用目的 | 個人の名刺管理 | 組織内にある名刺情報の可視化と共有、活用 |
コスト | 無料または低価格 | 高額(利用者数に応じた料金体系) |
共有機能 | 基本的には非対応 | 組織全体で共有可能 |
セキュリティ | 個人管理(漏洩リスクが少ない) | 高度なセキュリティ機能を搭載(アクセス制御など) |
付加機能 | 基本機能(スキャン、検索、保存) | 商談・案件管理、メール配信、API連携など |
導入の手間 | 簡単(アプリのインストールのみ) | 導入設定や教育が必要 |
4. 適切な選択の基準
個人向けが適している場合
- 個人事業主やフリーランスなど名刺管理が個人の範囲内に収まる場合。
- 低コストでシンプルなものを求めている場合。
法人向けが適している場合
- 組織全体で名刺を共有、管理したい場合。
- 名刺情報を起点に作業の効率化を図りたい場合。
- 顧客情報を一元化し、ビジネスプロセスを最適化したい場合。
- 名刺情報の持ち出しや漏洩を防ぎコンプライアンスを向上させたい場合。
5. まとめ
個人向け名刺管理アプリは、シンプルさとコスト面で優れる一方、法人向けアプリは情報共有や業務効率化の面で優れています。また、名刺情報は個人情報に該当するため、所有者は個人情報保護法の規制対象になる可能性があります。組織で個人向けの名刺管理アプリを利用すると常に持ち出しなどのリスクが伴うことを理解すべきでしょう。
それらを踏まえ、企業が導入を検討する際は、必要な機能、コスト、セキュリティ要件を明確にし、社内での運用ルールを整備することが成功の鍵です。一方、個人で名刺管理アプリを検討されている場合は日常的な使いやすさやコストを重視すると良いでしょう。