突然ですが、私は大のビール党です。
家飲みでも外飲みでも「とりあえずビール」そして「どこまでもビール」です。
健康診断の度に尿酸値が8点台中盤を叩き出そうとも、夜中にトイレで目が覚めることになろうとも、毎晩最低2リットル(500ml缶4本相当)のビールをやめることができません。同世代のイチロー選手がメジャーリーグで10年連続200本安打を達成する一方で、私は連日猛打賞のペースでコツコツと飲み続け、気がつけば20年以上連続1,000本飲んだを達成している計算になります。
今回のコラムでは、クラフトビールメーカーにみる競争優位の戦略についてご紹介します。「とりあえず」の一言で片づけることのできないクラフトビールの奥深い世界を中小企業診断士の目線で解説したいと思います。
ビール好きな人も、そうでない人も、どうぞ最後までお読みください。
クラフトビールとは
さて、みなさんはクラフトビールと大手メーカーのビールの違いをご存知でしょうか。
なんとなく、クラフトビールは小さな工場で作られたこだわりの品というイメージはお持ちだと思います。今までなんとなくしかわかっていなかった点を明確にすることで、ビールのおいしさを今よりも堪能することができるかもしれません。
クラフトビール誕生のきっかけは1994年の酒税法改正です。
ビールの製造免許を取得するハードルが下がったことで、中小のビールメーカーが多数誕生し、キリン、アサヒ、サントリー、サッポロといった大手のブランドビールと中小のクラフトビールとに分類できるようになりました。
ビールの作り方には、主にラガー酵母で発酵(下面発酵)と、エール酵母で発酵(上面発酵)があり、ラガーがゴクゴク飲めてのどごしを楽しむのに対し、エールは芳醇で濃厚な味わいと飲み応えがあります。
日本の大手ビールメーカーは、クセが少なくて大量生産しやすいラガーを主に生産しています。
それに対し、クラフトビールにはラガーもエールも存在します。
小規模な醸造所がそれぞれにこだわりのビール作りを行っていることが「クラフトビール」の語源とされています。
※クラフトは英語で「技巧」「技術」「手工業」の意。
主なクラフトビール
- ピルスナー…日本人の飲み慣れた味わい。のどごしが良い。
- ペールエール…ピルスナーより香り豊かで濃い味わいが特徴。
- インディアペールエール(IPA)…強い苦味が特徴。琥珀色で色味も美しい。
- アメリカンペールエール…アメリカ産ホップが持つ柑橘系の華やかな香り。
- スタウト…黒ビールの一種。苦味が少なく飲みやすい。
- ヴァイツェン…小麦麦芽が主原料。苦味を感じず柔らかな飲み口。
競争優位の戦略とは
小規模な醸造所が作るこだわりのビールが競争相手に対して優位性を築くためには、競争優位の戦略が必要になってきます。競争戦略の3つの基本形として「差別化戦略」「コストリーダーシップ戦略」「集中戦略」を挙げることができます(集中戦略には、コスト集中と差別化集中があります)。
コストリーダーシップ戦略(低コスト戦略)
競争企業よりも同種製品を低いコストで生産・販売する戦略です。
大量生産による低コスト製品を提供することによりシェアを高め、規模の経済性や経験曲線効果を得ることにより、一層の低コストを実現することができます。
規模の経済性は「生産規模の拡大により、平均費用(製品1個あたりの生産コスト)が逓減(ていげん)していく現象」であるのに対し、経験曲線効果は「累積生産量が増大するに従い、製品1単位あたりの生産コストが一定の割合で減少していくこと」です。
経験を重ねることによる作業者の熟練、生産工程や生産設備の改善などによるものと言えます。
よって、大量生産することのできる大手ビールメーカー向けの戦略と言えます。
差別化戦略
自社の製品に、買い手にとって魅力的な独自性を打ち出すことによって、競争企業に対する優位性を価格以外の点で築く戦略です。
代表的な差別化の方法は以下の通りです。
- 製品そのものに関するもの
品質、性能、デザイン、色彩、包装など - 製品サービスに関するもの
アフターサービス、代金の支払い条件、店舗数など - 消費者の認知度を高めるもの
広告、宣伝による製品の社会的認知度の向上、企業イメージの向上など
集中戦略
差別化戦略やコストリーダーシップ戦略が広い市場をターゲットとするのに対して、集中戦略は市場を細分化し、自社の能力にマッチした一部のセグメントに焦点をあてます。そして、その市場において差別化の面もしくはコストの面で優位に立とうとする戦略です。
企業は、その競争上の地位を明らかにしたうえで、規模の優位性を生かしたコストリーダーシップ戦略で行くのか、あるいはコストリーダーシップ戦略をとっている大企業ができないような差別化集中戦略をとっていくのかを検討します。自社の経営資源や、おかれている競争環境にあった基本戦略を選択していくことが重要です。
各メーカーが醸造所(ブルワリー)でクラフトビールを製造しているため、銘柄によって味わいが異なり、独自色が強くなっていることから、クラフトビールメーカーには差別化集中戦略が適しています。
広い市場をターゲットにしているわけではないため、万人に受けるビールを作る必要はなく、一部の熱狂的なファンの獲得を目指すことになります。
競合企業に模倣されると、「差別化」された特徴の優位性が喪失するリスクがあるため、「模倣困難性」すなわち独自の味わいを追求することが大切です。
結果、日本のクラフトビールは世界的ビールコンテストで表彰されるほどレベルが高いものになりました。
今、日本には数百のクラフトビールがあると言われています。
魚料理と肉料理では合うクラフトビールが変わってくるため、料理にビールを、ビールに料理を合わせる楽しみがあります。
また、仕事後と休日の昼間などシチュエーションによって、舌やのどが求めるビールの味わいも異なることでしょう。
これからクラフトビールを楽しもうと思われる方は、スーパーマーケットや飲食店などでクラフトビールに出会ったらまずは1度飲んでみることをオススメします。豊富な種類の中から、ぜひ自分好みの味を探してみてはいかがでしょうか。
インド人エンジニアと机を並べる私の一押しは「インドの青鬼」です。
インドの青鬼は、「インディアペールエール(IPA)」というスタイルのビールです。18世紀末にイギリスからインドへの長く過酷な輸送に耐えられるように、アルコール度数を高め、劣化防止効果のあるホップを大量に入れたことから生まれたそうです。華やかなホップの香りと、強烈な苦味、そして深いコクを味わうことができます。
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