記事の内容
中小企業診断士は経営の専門家であり、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行います。
最終的な成果につなげるには、クライアントが診断・助言の内容を理解し、心を動かし、行動を変えることが必要になります。
質の高い診断・助言を行うために、まずはクライアントが抱える問題、課題を余すところなく聞き出すことから始めます。
話し手の心を開き、スムーズに話してもらうために必要な「聴き方」は、中小企業診断士に限らず、普段の生活での円滑なコミュニケーションにとっても欠かすことのできないものでしょう。
今回は、短期間でコミュニケーション力が見違えるほど向上する「聴き方」のコツをお伝えします。
「聞く」と「聴く」
「(耳で)きく」を漢字にしたとき、多くの方の頭には「聞く」と「聴く」が浮かぶと思います。「聞く」と「聴く」にはどのような意味や違いがあるのでしょうか。
どちらの漢字にも「耳」が入っていることからもわかるように、「聞く」も「聴く」も耳を使って行う行動であることには違いがありません。
「聞」の漢字は「門」と「耳」が組み合わさっており、「門」は「左右両開きの戸」の象形です。このことから、「音が自然と耳に入ってくること」を表しています。
これに対し、「聴」の漢字は「耳」の象形と「階段(突き出るの意)」の象形、そして「目と心臓」の象形から成り立っており、「耳を突き出し、まっすぐな心でよくきくこと」を意味しています。
よって、自然に耳に入ってくる場合には「聞く」を、注意深く耳を傾ける場合には「聴く」を使うのが適切です。
この「聴」という字を使った「傾聴」という言葉があります。
これは、相手の話したいことに対して深く丁寧に「耳」「目」「心」を傾け、相手に肯定的な関心を寄せ、内容の真意をはっきりとさせながら共感的理解を示すコミュニケーションの技法です。
- コミュニケーションがスムーズになる
- 話し手の気持ちをつかむことができる
- より質の高いアウトプットに繋がる
といったメリットを挙げることができ、円滑なコミュケーションはもとより、信頼関係の構築にも役立てることができます。
傾聴には、話し手に話したいと思わせる信頼を得るための「聴く力」と、情報を引き出すための「質問力」の両方が必要になります。
「聴き方」のコツ
心をつかむ「聴き方」のコツとしては、話し手の立場にたち、自分のことのようにありありと想像して聞く「共感」と、話し手のありのままを受け入れる「受容」を挙げることができます。
話し手に伝わる「共感」の示し方としてはどのようなものがあるのでしょうか。
共感を示す上でのポイント
話し手とペースや話し方を合わせる
話し方(方言、スピード、テンポ)、話し手の状態(明るい、暗い)、呼吸(タイミング、速さ)など、人それぞれの持っているペースは異なります。話し手とペースを合わせることで一体感が醸成されます。
身体でリアクションを示し相槌を打つ
うなずく、首をかしげる、メモを取る、身を乗り出す、手を合わせるといったリアクションに加え、「なるほど」「そうですね」と納得・同意を示したり、「本当に!」「すごい!」と驚き・感動を示したり、「すなわち」「それで」と話を掘りさげたりする相槌を打つことで、聞いていることを話し手にわかりやすく示すことは、相手に気持ちよく話してもらい、より多くの情報を引き出すことに繋がります。
アイコンタクトを取る
人が目から受け取る情報は知覚の83%と言われています。人は視線から感情を読み取るため、アイコンタクトは不可欠です。目線が下がることで穏やかな表情に見えるため、視線を口元からネクタイの位置に向けることが望ましいです。また、ポイントとなるときに1秒程度のアイコンタクトを取ることも効果的です。
一方で、話し手のありのままを受け入れる「受容」のポイントとしてはどのようなものがあるでしょうか。
受容を示す上でのポイント
話し手の言葉を繰り返す
感情を示す言葉や力強く発せられた言葉を繰り返すことで共感を深めることができるのです。
例)
Aさん:うちは人数が少ないから新事業の立ち上げから大変だったんだ。
Bさん:とても大変だったんですね。
ポジティブな言葉に言い換えて親密感を持たせる
ポジティブな言い回しを用いることで話し手に自己肯定感を生むことができるのです。
例)
Aさん:X社の受注は取れたけど、Y社は失注してしまったよ。
Bさん:Y社は失注したけど、X社は受注できたんですね!
ポジティブな言い換えに使える表現の例
- いい加減⇒おおらか
- 飽きっぽい⇒切り替えが早い
- 内気⇒おしとやか
- 計画性がない⇒行動力がある
- 愛想笑いをする⇒空気を読める
欲しい情報を引き出す「質問」のコツ
「質問力」とは、質問によって話し手の情報や考え、気づきを引き出す力のことです。
全ての情報を話し手が意識しているとは限らないため、質問を駆使することで本人すら認識していないより価値の高い情報を得ることができるかもしれません。
情報を引き出すための質問のコツにはどのようなものがあるのでしょうか。
オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを使いわける
5W1Hをベースにした、YesかNoで答えられないオープンクエスチョンをすることで、会話の幅が広がったり、話し手にも気づきを与えたり、聞き手が思いもしない答えを得られたりすることができます。反対に、YesかNoで答えられるクローズドクエスチョンは話し手が比較的答えやすく、会話のテンポを上げることができます。
どちらか一方ではなく、織り交ぜて使うことで会話が弾んでいきます。
なぜなぜを繰り返し掘り下げる
なぜを複数回繰り返すことで、明らかにされていない情報を得ることや、本人すら意識していない真の原因や思いを見つけることができます。
まとめ
- 傾聴は「聴く力」と「質問力」の組み合わせ
- 「聴く力」とは「共感」と「受容」を示して心をつかむ力のこと
- 「質問力」とは、質問によって話し手の情報や考え、気づきを引き出す力のこと
今回お伝えした「聴き方のコツ」が、みなさんの円滑なコミュニケーションに役立つことを願ってやみません。
参考文献
「外資系コンサルに学ぶ聞き方の教科書」著:清水久三子東洋経済新報社
「アクティブリッスン!「聞く力」を武器にする」著:澤村直樹すばる舎
「インタビューの教科書」著:原正紀同友館
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