
はじめに
ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)を取得している企業は、事業を運営する上で、組織内にある情報資産に対し適切な管理が求められています。顧客情報もその一つであり、特に、個人情報に該当する名刺の管理には十分な注意が必要です。
しかし、ISMSを取得するような企業でさえ、未だに名刺管理を個人に任せていることがあります。
名刺の個人管理には、情報漏えいや、退職による持ち出し、情報への不正アクセスなど様々なリスクがあります。そのため、場合によっては企業として大きな信頼低下を招く危険性があります。
名刺をデータ化し効率的に管理する名刺管理アプリの導入は、情報セキュリティの強化のみならず、業務効率化やコンプライアンス遵守、リスク管理の向上など、様々な効果を期待できます。
今回は、名刺管理アプリを導入することで得られるメリットをいくつかの観点から解説します。
情報セキュリティの強化

ISMSを取得する企業において、情報を安全に管理することは最優先事項です。
従来の紙の名刺管理では、情報漏洩や紛失のリスクが高く、情報を安全に管理するのは困難です。
しかし、名刺管理アプリを利用することで大切な顧客情報を安全に管理することができます。
法人向け名刺管理アプリ「ネクスタ・メイシ」を例に説明すると、登録した名刺データは日本政府指定のパブリッククラウドであるAW上のSセキュアな環境に保存されます。データベースはWAF(Web Application Firewall)により外部からの攻撃を遮断、ストレージも暗号化されているため安心です。また、ユーザーが名刺データにアクセスする際の通信はSSL/TLSで保護されているため、盗聴や改ざんの心配もありません。
アプリ側にも同様にセキュリティをコントロールするための機能が搭載されています。
例えば、CSVのエクスポート権限を一部ユーザーに限定したり、特定の部署の名刺情報とそれに紐づく商談履歴を非公開にしたりすることができます。
また、名刺データにアクセスできるIPアドレスの制限や退職者による名刺情報持ち出しを防ぐためのアカウントの無効化などがあります。もちろんユーザーの操作ログを一部取得することも可能です。
また、ネクスタ・メイシに限らず、名刺管理アプリはサーバー上にデータを保存するため、紙媒体と比比べ、盗難や物理的な紛失の心配がなくなります。こうした仕組みは、ISMSの要求事項である「情報の機密性、完全性、可用性の維持」を強力にサポートします。
コンプライアンス遵守の推進

名刺管理アプリは、個人情報保護法をはじめとする法令遵守の観点からも非常に有用です。紙の名刺では、必要以上に多くの情報が散在し、保管期間や管理体制が不透明になりがちですが、名刺管理アプリを導入することで、これらの問題を解消できます。
特に最近では、A社で取得した名刺情報を転職先B社に不正提供し、個人情報保護法違反として逮捕者が出るような事件も発生しています。法人向けの名刺管理アプリを利用し、ユーザーの権限を適切に管理することにより、こうしたリスクを大幅に低下させることができます。
つまり、名刺管理アプリを利用することで取引先や顧客に対する法令遵守の姿勢を明確に示すことができ、企業の信頼性向上にもつながります。
さらに、GDPR(一般データ保護規則)などの国際基準にも対応可能なアプリを選択すると、国内外での事業展開を視野に入れた情報管理が実現します。特にグローバル企業にとって、コンプライアンス遵守を支援するツールとして名刺管理アプリは不可欠な存在です。
リスクマネジメントと事業継続性の確保

ISMSを取得している企業にとって、リスクマネジメントは重要なテーマです。
名刺管理アプリの導入は、災害時や非常時のリスク軽減にも寄与し、事業の継続性を高めてくれます。
一番身近な例としては、台風や豪雨、積雪などで交通機関が麻痺しテレワークを余儀なくされるようなケースでも、名刺管理アプリを利用していれば業務が滞ることはありません。
当然のことながら名刺情報はクラウド上に保管されているため、社外からも顧客情報にアクセスすることができます。
また物理的なリスクにも有効です。紙の名刺は火災や水害といった災害で情報が消失してしまう可能性がありますが、クラウドに保存された名刺データが消失するリスクは極めて低く、もし仮に災害によりデータセンターが甚大な被害を被ったとしても、別の地域にバックアップ拠点を持つことでリスクを回避することができます。つまり、名刺管理アプリを導入することで、取引先との連絡が途絶えるリスクは最小化し、事業継続性を確保することが可能になります。
企業イメージの向上

デジタルツールを積極的に導入し、情報セキュリティや効率性を重視する姿勢は、企業のイメージ向上にも寄与します。名刺管理アプリの導入を通じて、取引先や顧客に対して安全な情報管理体制をアピールすることが可能です。
特に、環境問題への関心が高まる中で、紙の名刺に依存しないデジタル管理への移行は、環境保護の観点からも評価されます。こうした姿勢を示すことで、取引先や顧客からの信頼を得るだけでなく、新たなビジネスチャンスを創出する可能性も高まります。
おわりに
ISMSを取得している企業にとって、名刺管理アプリの導入は、情報セキュリティの強化、業務効率の向上、コンプライアンス遵守、リスクマネジメント、そして企業価値の向上に至る多くのメリットをもたらします。これらの効果を総合的に考慮すると、名刺管理アプリの導入は、ISMSの要件を満たすだけでなく、企業の競争力を高める重要な投資と言えるでしょう。