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2020年春より携帯大手3社がサービスを開始した5G。
みなさんもニュースやTVCMで見かけたことがあると思います。
「5Gで世界が変わる」
などとよく言われていますが、
どこがすごいのか、また何が変わるのかイメージできないという方も多いのではないでしょうか。
5G元年となる2020年は、未知なるウイルスとの共存を求められる「withコロナ」時代でもあります。
対面から非対面へ。接触から非接触へ。
人やものの距離が見直されている今、あらためて5Gについて考えます。
5Gとは何か
5Gをよく知らないという方のために5Gについて解説します。
5Gとは「5th Generation」の略称で、
日本語では「第5世代移動通信システム」と呼ばれています。
よく、WiFiの5GHz帯と混同されている方がいますが、
こちらは「周波数帯」のことを指し、全くの別のものになるので注意してください。
世代とは?第1世代から第4世代までを振り返る
携帯電話の歴史を振り返ると、いくつかのタイミングで「価格」、「機能」、「操作感」が飛躍的に変化しています。
また、これまでその変化は、ほぼ10年周期で訪れており、
ひとつの変化から次の大きな変化までの期間を「世代」と呼んでいます。
5G(第5世代)と呼ばれるわけですから、移動通信システムはすでに4回の飛躍的変化を遂げていることになります。
3G、4Gはみなさんも知っているかと思いますが、実は、その前に1Gと2Gという「世代」があります。
ここでは、簡単にこれまでの世代のについて振り返ります。
1G(第1世代)
1980年代に登場したアナログ方式の移動通信システム。
アナログ無線技術をベースとしたもので、市販の受信機を使用すれば、誰でも会話の内容を傍受できてしまうというものだった。
携帯電話とはいえ重量の関係で国内では自動車電話として都市部を中心に普及。その後、軽量化された「ショルダーフォン」が販売された。
2G(第2世代)
1990年代に登場したデジタル方式の移動通信システム。
アナログからデジタルに通信方式が変わったことにより、インターネットへの接続が徐々にはじまった。ショートメールサービスにより簡単なテキストの送受信が可能になり、1999年にはドコモが「iモード」サービスを開始した。
一般層に普及しはじめたのはこのタイミング。
3G(第3世代)
2000年代に登場した初の世界標準となる移動通信システム。
地域で採用する無線技術が異なるため「地域限定」であった携帯電話を世界のどこからでも使えるようになった。
また、通信は高速化され、携帯電話からのインターネット接続が一般的なものとなっていたった。
2007年にはモバイル向けOSを搭載したiPhoneが登場し、それまでの携帯電話(フィーチャーフォン)に対してスマートフォンと呼ばれた。
4G/LTE(第4世代)
2010年代に入り、LTEと呼ばれる通信規格によりこれまで以上の高速データ通信が可能になった。
LTEとは「Long Term Evolution(ロングタームエボリューション)」の略称で、もともと3Gを高速化して4Gへの移行をスムーズにするために開発された。そのため、当初は3.9Gなどと呼ばれていたがLTEを含め4Gと呼ぶことになった。
高速で大容量の通信が可能になったことで、オンライン型のモバイルゲームや動画コンテンツが充実した。
現在の主流は4G/LTE。
5Gの特徴
前述の自動車電話から数えて5世代目にあたる移動通信システムが5Gです。
2020年代の主流になるとされ、国内では携帯大手3社が今春からサービスを開始しています。
4Gがスマートフォンのための移動通信システムであれば、
5Gは社会インフラのための移動通信システムと称されています。
これは、どのくらいすごいことなのでしょうか。
5Gの特徴は以下の3つといわれています。
- 高速大容量
- 高信頼・低遅延通信
- 多数同時接続
4G/LTEと5Gの比較表
4G/LTE | 5G | |
通信速度 | 最大50Mbps〜1Gbps | 最大10〜20Gbps |
遅延速度 | 10ms | 1ms |
同時接続数 | 10万台/㎢ | 100万台/㎢ |
4G/LTEに対し、5Gは通信速度で10〜20倍以上、遅延は1/10、同時接続数は10倍になるといわれています。
数字だけではピンとこないかと思いますので、実例を挙げて説明します。
高速大容量
従来はダウンロードに数分かかってしまうような動画コンテンツをわずか数秒でダウンロードすることができるようになります。
仮に、これまで30秒かかっていたものであれば、1.5〜3秒程度でダウンロードが可能です。
もはや、「ダウンロード」というの概念自体がなくなると予測されています。
他にも4K、8Kなどといった大容量で高精細なコンテンツのダウンロードやライブストリーミング、MR(複合現実)技術を用いた臨場感のあるコンテンツを携帯端末から利用できるようになります。
高信頼・低遅延通信
「高信頼・低遅延通信」とは「(通信の)リアルタイム性が格段に上がる」と理解してください。
遠隔地やへき地などでの通信には、必ず一定のタイムラグが発生します。
その遅延が、現在の4G/LTEに比べ、1/10以下になります。
前項の「高速大容量」と組み合わせることにより、スポーツやコンサートなどのコンテンツをリアルタイムで楽しむことができるようになります。
また、経験と勘が求められるような手作業を離れた場所から行うことができます。
5Gが農業や医療、自動運転技術など様々な分野での活用が期待されているのは「高信頼・低遅延」によるところが大きく、自動運転システムであれば障害物を瞬時に判断し回避するといった技術に反映されます。
多数同時接続
4G/LTEの10倍の同時接続が可能になるため、これまでスマートフォンやタブレットに限られていたモバイルネットワークに、あらゆるものが接続されるようになります。これによりIoT(Internet of Things)がこれまで以上に加速するとみられています。
新型コロナウイルスによって見直された物理的距離とITの可能性
7月2日に行われた、第38回国土幹線道路部会で国土交通省は全国高速道路の「ETC専用化」を検討する意向を表明しました。
新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済に大きな影響を及ぼす中、同ウイルスの感染拡大防止に向け「非対面型」のニーズが急速に高まっています。
緊急事態宣言により国内ではテレワークを導入する企業が増加。
クラウド型の情報共有ツールやZOOMなどのビデオ会議ツールに注目が集まりました。
それらのツールは、教育や医療の現場でも利用されています。
また、日常生活に目を移せば、「オンライン飲み会」や「オンライン帰省」などといった新しい言葉も生まれました。
新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちは接触を必要とするものとそうでないものを再定義しようとしています。
そして、「(必ずしも)接触を必要としないもの」に対してITの活用が進んでいます。
新型コロナウイルスは、私たちが持つ物理的距離に対する価値観を大きく変え、デジタルトランスフォーメーション(DX)に対する意識を高めている側面があると捉えることができます。
5Gはこうした流れを加速させる可能性を秘めています。
働き方の多様化
今回の緊急事態宣言により、多くの企業において導入が進んだテレワーク。
しかし、オフィスでの作業に比べ、リモート環境下での作業にはまだ多くの課題があります。
データの送受信やダウンロード、アップロード作業にストレスを感じたり、ビデオ会議中に画面がフリーズしてしまうなど通信状態により作業効率が低下してしまうようなケースが挙げられます。
また、物理的距離から発生するコミュニケーションの問題も同様です。
こうした課題は5Gにより改善されていくと考えられています。
リモート環境下での通信遅延によるストレスは解消され、バーチャルオフィスなどの技術は今後ますます進化していくことが予測されます。
リモート環境が実際のオフィスに遜色ないレベルになれば、働き方はますます多様化していくとことでしょう。
体験のオンライン提供
新型コロナウイルスをきっかけに大規模なイベントの開催が相次いで中止となる中、今までにない試みも多く生まれています。
国民的人気グループEXILEを擁すLDH JAPANとサイバーエージェントが共同で設立した合弁会社「CyberLDH」はバーチャルでのエンターテイメント領域拡大を目指し、動画配信サービス「CL」を6月15日から開始しました。
さらに、7月2日から8日にかけ「LIVE×ONLINE」を開催。
LDH所属アーティストのオンラインライブを7夜にわたりABEMAで生配信しました。
ライブ後には、Zoomを使いファンミーティングを開催するなど新感覚のライブ体験が話題になっています。
また、シンガーソングライターのあいみょんは日比谷野外音楽堂で無観客ライブ「AIMYON 弾き語りTOUR 2020 “風とリボン” supported by 淡麗グリーンラベル」を開催。
その模様を、自身の公式YouTubeチャンネルで無料生配信しました。
本来、リアルで触れるからこそ価値があるとされてきたコンサートなどのイベント体験もオンライン化が進んでいます。
コンサートなどイベント体験だけではありません。
5Gはスポーツ観戦の多角化においても活躍が期待されています。
2018年に沖縄セルラースタジアムで行われたプロ野球の実証実験では、スタジアムに設置された16台のビデオカメラで撮影した映像をリアルタイムで合成し端末に配信。観戦者はバッターボックスの映像を様々な角度から楽しみました。(プロモーション映像はこちら)
プロ野球、Jリーグは無観客での開幕となりましたが、今後5Gが普及すればスタジアムに足を運ばなくとも、それぞれの端末から思い思いに観戦を楽しむことができるようになります。
まとめ
今回は5Gについて取り上げました。
気になる5Gの現状ですが、移動通信システムにおいて要となる「基地局」が圧倒的に足りていないことから、普及までの道のりは決して簡単なものではありません。
現在、5Gを体験できるスポットは非常に狭く、NTTドコモの「5G通信利用可能施設・スポット一覧(2020年6月末時点)」によれば、都内でさえわずか19カ所に限定されています。
現在の主流となっている4G/LTEがNTTドコモから発表されたのが今から10年前の2010年。
その後、各キャリアで4G/LTEを利用できるようになるまでに2年間かかっていますが、5Gではそれ以上の時間を要すとみられています。
多くの課題を抱える5Gですが、普及すれば世界を大きく変える可能性を秘めています。
コロナショックにより大きなパラダイムシフトが起きた2020年。
5Gの動向が「新しい日常」を大きく左右することは間違いないといえそうです。